Real Estate Agent Award 審査員特別賞 インタビュー
株式会社日本エイジェント
松浦 仁美
瀬戸内海に浮かぶ大三島生まれ。斡旋事業部で複数店舗の店長を経験し、その後スタッフレス事業部へ転属。全国130店舗に広がるスタッフレスショップの拡大に大きな力を発揮した。現在は、資産運用課売買係のチーフを務める。
審査員からのコメント
仕事と介護の両立は働く世代にとって他人事ではありません。そして現実にその状況になったとき、会社はどのような仕組みを用意し、社員は限られた時間や資源でどう働くのか、そして自分自身がどんな姿勢で取り組むと良いのかを網羅した話で、業界問わず参考になる話だと思います。
ー 発表内容
日本では1年間で実に10万人の人が「介護」を理由に退職していると言われています。しかもその8割は女性。「介護しながらでは仕事を続けられない。」「でも仕事を辞めたらその後の人生はどうなってしまうのだろうか・・・。」介護との直面は過酷な現実でもあります。そして、人材確保が難しい中40代50代の働きざかりの社員の退職は、企業にとっても大きな問題となっています。 日本エイジェントのスタッフレス事業部の営業として全国を飛び回っていた松浦さんに突然訪れた父の死、そして母の介護。絶望的なこの状況に「退職」の二文字が頭に浮かんだ彼女を救ったのは、2つの社内制度、「介護休業」と「FA制度(フリーエージェント制度:自分の希望する部署へ異動希望を出せる制度)」でした。
2017年10月4日の「Real Estate Agent Award~日本一決定戦~」で 発表した松浦さん
ー REAAに参加してみていかがでしたか?
初めてのことでしたので、ワクワクとドキドキが入り混じった気持ちで挑みました。当日を迎えるまでは、「どんな感じかな?」と思っていましたが、終わってみれば楽しかったですし、意外に気持ち良かった!貴重な体験ができて良かったです。
ー REAA出場前も長い道のりがあったそうですね?
当社では、社内で行われているプレゼン大会「agent Awards2017」に優勝すると、REAAのエントリー権を得ることになっています。ですから、6月に始まった社内予選から考えると、とても長い道のりでした。全社員約130名が参加する予選を勝ち抜いた各部署の代表12名が、「agent Awards2017」の本戦出場権を獲得し、そこで優勝した人だけがREAAにエントリーできるんです。出場が決まってからは、社長をはじめ同じ部署のメンバーや社内の皆さんがプレゼンのロープレを見てくれて、修正しながら仕上げていきました。
ー REAAへの出場が決まって、どんな気持ちでしたか?
今回のプレゼンは自分だけで作り上げたんじゃなくて、いろんな人の応援があって、この場に立てました。なので、このプレゼンには皆の思いも詰まっていて、だからこそ頑張りたいと思いました。
また、私の経験をお涙頂戴モノ的に伝えるのではなくて、自分の経験によってこういうことができるんだということをきちんと伝えたかった。それを伝えられる場所であり、自分の経験を知ってもらえるいい機会だと思いました。
ー 審査員特別賞を受賞されましたが、周囲の反響は?
スタッフレス事業部時代には、全国の不動産会社の方と交流がありましたので、その時お世話になった方から、たくさん声を掛けていただきました。3ヶ月の介護休業を取る前にお話していた方もいたのですが、仕事に復帰したという話は皆さんにできていなかったので、今回のREAAを見て、「仕事に復帰できたんだね!」と声を掛けていただくことも多かったです。
あと、社内で発行しているオーナー様向けの会報誌にも大きく掲載されたので、オーナー様からの反響も大きかったですね。
審査員特別賞受賞の様子
ー 社内での反響はいかがでしたか?
社長をはじめ、社内のみんなにも「おめでとう!」と言ってもらいましたが、私としては、行くからにはグランプリを獲らないといけなかった気がしていて・・・。正直なところ、グランプリとか準グランプリを獲りたかったという思いはありますが、手ぶらじゃなくて「審査員特別賞」というお土産を持って帰ってくることができたのは良かったと思います。
ー 今回、介護と仕事の両立と女性の活躍をテーマに発表されましたね。同じ環境で悩んでいる人に伝えたいことは?
抱え込まずに、まずは相談することですね。私は幸運なことに会社に「介護休業」や「FA宣言」の制度がありましたので、手を挙げて利用させてもらいましたが、そういった制度がないところでも、それを機に、会社の規定を変えるくらいの気持ちで取り組んでみて欲しいですね。自分がそんなきっかけづくりになればいいんじゃないかなと思います。
時代背景も昔とはずいぶん変わってきて、苦労が美学って時代でもないですし・・・。自分にとっても会社にとっても前向きな取組みとして、前に進む第一歩にしてもらいたい。その方が会社もきっと良くなります。
これから介護の問題は絶対に増えていくし、わかっているけど、手を付けられてない会社もあると思います。自分のためにもですが、後に続く人のためにも、そこを切り開くことをやっていかないといけない時代。みんながイキイキと働くために、一歩踏み込んで相談してみてはいかがでしょうか?
ー 介護と仕事の両立などの問題に直面した時、落ち込んだり気力がなくなったりする人もいると思いますが、どうやって前向きに捉えて行動に起こしたのですか?
いろいろありますが、大きかったのは「上司の協力」ですね。まずは社内の人に相談してみることだと思います。相談することで、協力してくれる人が出てくるし、そういう人が支えになって前向きな力が生まれてきます。
ー 女性の活躍について。松浦さんが所属している売買部門は特に男性が多いと思いますが、女性活躍のシーンってどんなものがありますか?
私もまだ勉強中ですけど、例えば相続相談の場合、実は女性からの相談が意外と多いんですね。男性って自分の死とか老い先を認めないというか、現実を直視できない部分があると思うんです。その点女性はシビアで、終活についてもちゃんと受け止められるので、女性同士で話すことで距離は縮まるし、具体的に話が進んでいくんです。だから、相手の気持ちを汲み取って、うまく提案していければいい仕事ができるんじゃないかと思っています。
ー 女性として活躍していくために、取り組んでいることはありますか?
「女塾」という社外の女性だけの集まりに参加させていただいています。月に1回、不動産会社だけではなく、異業種も含めて10名くらいが集まっていて、年齢も20代から50代までと幅広いです。メンバーには女性経営者もいて、年齢や会社での立場はそれぞれ違うけれど、上下関係もなく、同じ立場でざっくばらんに話せるのがいいですね。外部の専門家を講師に招いて、年金や政治のことなど毎回違ったテーマで話していただき、その後の食事会で質問や意見交換などを行っています。こんなに頑張っている女性がいるんだというのが励みになるし、自分もやらなければいけないなと駆り立てられます。自分のポジティブな部分を引き出してくれる会ですね。
仕事中の松浦さん
ー いきいきと仕事をするために、気をつけていることはありますか?
プライベートも充実させることです。職場では、「疲れてるね」とか言われたくないですし、年取ってため息ばかりをつくような人にはなりたくない。シャキッと仕事をしていたいですね。そのためには、好奇心を持つこと。「やってみたい!」「やってみようかな?」ということが大事だと思っています。
ー これからの夢を教えてください。
当社は、「リクエストマンション」や「レスQセンター」など、“賃貸部門”の取組みで注目されることが多く、私たち売買部門が注目される機会はほとんどありません。だからこそ、新しい歴史をこれから作っていきたい。新しい取組みで、日本エイジェントの売買部門が地域や業界で活躍できるように私自身貢献していきたいと思っています。